近頃、「かかりつけ医」という言葉をよく耳にしませんか?
そして、たとえ耳にしたことはあっても、「かかりつけ医」がどんな意味なのか、何をしてくれる医者なのかを明確に答えられる人はなかなかいないのではないでしょうか。
「かかりつけ医」とは、端的にいうと“日常的、継続的に患者さんの身体の変化を診る医者”のことです。
ですがこういう言い方だと、概念的過ぎてわかりにくいかもしれませんので、もう少し詳しく掘り下げてみましょう。
一年中毎日のように採血やX線検査などの健康診断を自ら行ったり、何の症状もないのに薬を飲み続けたい方はふつう、いないかと思います。(予防のために薬を飲むことはあるかもしれませんが)
それに、自分が健康だと思っている時に病院に行きたがる人もあまりいませんよね?
身体がいつもと同じ状態であるときに医療は絶対的ではありません。つまり、人間にとって医療が必要になるのは、「病気」という“身体がいつもとは違う状態(しっくりこない状態)”になったときなのです。「病気」という非日常、つまり身体にとって極めて特殊な状況において初めて医療の必然性が現れてくるのです。
でも、身体がいつもとは違う状態、非日常状態とは何を意味しているのでしょうか?
そのような変化は、本人だけにしかわからないものなのではないでしょうか?
他の誰かに“昨日の自分”と“今の自分”の違いをどのようにしたら“わかってもらえる”のでしょうか?
少しだけ専門的な話をしますが、「医学的に健康」だという目安の一つとして、身体が“恒常的”であるということが挙げられます。
たとえば、ものすごく暑い日に長時間外にいると、当然汗が出てきます。人間は恒温動物ですから、汗を出すことによって体温調節をしているのですね。外の環境に対して人間がしっかりと適応できれば、この場合ですと、うまく体温調節ができていれば、それは健康的な状態といえます。そしてこれを、“恒常性が保たれている”とも言い換えられるのです。
しかし、人間の体温は通常、だいたい37℃付近に収まっているのですが、それが身体の何らかの“変化”によって体温が上がりすぎたり下がりすぎたりしては困ります。病的状態、つまり「病気」になってしまうからです。(体温40℃の自分を想像してみてください)
こんな当たり前のことは、いまさら言わなくても皆さまご存知かもしれません。ですが、「かかりつけ医」を説明するうえで実はこのようなことはすごく大事なことなのです。
「かかりつけ医」は皆さまの日常を観察します。日常を観察しながら、ある病気のような非日常状態への“変化”を見極めるのです。
先の場合ですと、汗を出すということによる体温調節がうまくいっているか、うまくいっていないのなら何が原因となっているのか、ということを患者さんの日常を基に辿っていきます。
そうすることで、患者さんの“変化”に広く対応できるのです。日常の身体の状態を知っていることで、今、ここ、への“変化”にも、ほんの些細なことから気づくことができるのですね。
もちろん、高度に専門的な治療が必要な場合や、極めて特殊な疾患に罹患した場合など、日常からの“変化”を観察することなどにほとんど何の意味も持たないことも多々あります。
また、医療技術の進歩により、機械的に検査をするだけでも患者さんの多くの情報を得ることができます。
ですが、安心できる医療を皆様にお届けするという意味において、「かかりつけ医」の“日常性”はやはり重要な位置を占めているといえるのではないでしょうか。
特に情報過多といわれる現代において、皆さまが気になっておられ、ちょっとだけ聞いてみたい専門的なことに気軽にお答えする役目を果たせるのも「かかりつけ医」が必要とされる理由なのかもしれません。
・薬の飲みあわせ(市販薬との併用など)に対し専門的な立場からご指導させていただくことができます。
・総合病院などでの精密検査の予約、報告を患者様のご希望に沿う形で提供することができます。
・患者様ごとに適切な専門医をご紹介することができます。
・患者様ご本人だけでなく、ご家族のかたたちと一緒に治療へのよりよい道を探すことができます。
・ケアマネージャーさんを通し、適切な在宅サービスなどを提供できます。
・画一的な治療ではなく、患者様に対して親身になった、より“質感”を重視した医療への橋渡しができます。
・日頃の食生活の改善や運動へのアドバイス等、生活習慣病への予防に二人三脚でご一緒に取り組めます。